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後藤由紀恵歌集『遠く呼ぶ声』

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自分の足元が覚束なくて立ちつくす。私はどこへ行こうとしていたのだろう。どこへ行けばいいのだろう。かつて心に抱いていた秘密の花園や夢の岸辺も今は遥か遠くに霞んでいる。遠くで私を呼ぶ声がする。振り返ればそこには私の歩いてきた道がある。そうだ私はここにいる。そしてここで生きてゆくのだ。
生きることに迷ったとき、立ち止まって読んで欲しい。なぜならそこには、現代をしなやかに生きる一人の人間が歌とともにいるのだから。
著者10年ぶり待望の第3歌集。

【五首選】
カレンダー白きまま夏は近づけり 素足で砂を踏むような日々
子を生さぬ幸も不幸もひといきに呑み込む夜の鯉ぞわれらは
遠く遠く呼ぶ声のして振り向けばただ中空にまひるまの月
うちがわをうすく削がれてゆく午後の外線電話またも灯りぬ
水鳥もわれらもほろびしのちの世を池とベンチを照らす光よ

2023年10月9日発行
四六判上製カバー装212頁
装幀:倉本 修

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